うちには簡易金庫があると言うと、たいていの人は「珍しいね」と驚く。それを聞いて初めはカルチャーショックだった。なぜならうちの実家や親せき一同はみんな金庫を一家に最低でも一台は置いていたからだ。うちの実家は簡易金庫と普通の耐火金庫があり、それが当たり前だと思っていたので、次は普通の金庫を買わなくちゃなーと思っていたのだ。だから金庫のない生活なんて、鍵をかけずに外出するのと同じくらいの心許なさがある。

その簡易金庫、何が入っているのかというと、印鑑とか通帳とかのごくごく普通の貴重品だ。それを私が実家から持ってきた学習机の鍵のかかる引き出しに入れているので、実質二重ロックということになる。そしてその金庫の鍵は、私の財布に常に入れて肌身離さず持ち歩くようにしていた。

ところが先日、帰ってきてカバンから財布を取り出そうとしたら、財布が見当たらないことに気づいた。私は真っ青になってその日一日寄ったところを、財布は落ちていなかったかと尋ねて回った。息子の通っている幼稚園、コンビニ、友人の家…最後に交番に寄り、紛失届を提出した。現金はもう仕方ない。けれどもカードや金庫の鍵だけは戻って欲しいという願いも叶わず、あれから一か月経ったのでもう諦めかけている。金庫の鍵がない場合、壊すしかないのだろうか。それとも鍵屋さんにいけば開けてくれるのだろうか。でもどのみち新しい鍵にするならば、いっそのこと家で金庫を破壊して、新しい簡易金庫を購入してしまおうかと考えている。

財布一つ失くすだけで、こんなにも不安な毎日になるなんて。新しい財布は絶対に失くすまいと心に決めている。